2023年2月5日

研修講座 『医療コミュニケーションの実際』 『依存症のいま』 開催

 2月5日(日)に第2回医学研修講座を開催いたしました。
 午前は札幌医科大学 医療人育成センター長の杉村政樹先生をお招きし、『医療コミュニケーションの実際』というテーマでご講義をしていただきました。
 まず、コミュニケーション力の向上によって患者さんとの信頼関係を構築することは、より高い治療効果を得るためには不可欠であるとのお話がありました。そして、信頼関係構築のためには自己肯定感を満たすような人間関係が求められるとのことでした。
 コミュニケーションにおいて重要なことは、傾聴や共感、そして要約を軸としたリスニングスキルであると示されました。伝える力・メッセージスキルを向上させるには、まず言語化が重要で、相手の「自己肯定感」を満たす言葉の投げかけが有効とのことでした。効果的な話し方としては、本題からストレートに伝えること、先に全体像に触れること、話のナンバリングをすることなどでした。
 よりよい対人関係・信頼関係構築のための心構えとして、「物事を温かく肯定的に捉える姿勢」であるとのご示唆がありました。
 近年の医療コミュニケーションは、患者と医療者の視点のずれを課題とし、ナラティブ・ベイスド・メディスン(物語と対話に基づく医療)という考え方が重視されているそうです。患者さんの物語・医療者のねらいをお互いのすりあわせによりよい結果に近づけていくことを目的としているものです。
 治療技術がどんなに優れていてもコミュニケーションに問題があれば、良い結果は期待できない〜医療面においても、世の東西を問わず、コミュニケーションが重要視されているということが再確認できる講座でした。

 午後は、医療法人北仁会 旭山病院 依存症センター長の橋本省吾先生をお招きし、『依存症のいま』というテーマでご講義をしていただきました。
 まず、依存症とは脳内で報酬を求める働きが強くなり制御不能となった状態との説明がありました。依存対象物質の摂取によって、脳内にドーパミン(快楽物質)が分泌され、中枢神経系が興奮し、快楽・喜びにつながり、この感覚を脳が報酬と認識すると、その報酬を求める回路ができあがるとのことでした。 
 次に、アルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存、ゲーム・ネット依存についての説明がありました。その中で、アルコールは1gあたりのカロリーが7.1kcalなので太らないは嘘であること、アルコールの摂取は0に越したことはないことや、長期の飲酒によって手足のしびれを起こすアルコール性神経炎などについて詳しくお話しいただきました。また、ゲーム・ネット依存では、睡眠時間の確保について着目すべきとありました。
 依存症の主な治療法は精神療法、薬物療法で、最も効果的なものは、依存対象を変える・増やすという側面も持つ自助グループへの参加であるとのことでした。
 周囲の接し方のポイントには、イネーブラー(悪い結果をもたらす援助者)にならないこと、本人を子供扱いしないこと、脅し・すかしをやめること、本人の不始末の尻拭いを避けること、本人の行動に一喜一憂しないこと、家族は家族同士でつながることが挙げられました。
 まとめでは、依存症に陥らないためのポイントとして、以下が示されました。
 ・「体に良いことは、心にも良い」ことから、適度な運動と睡眠、バランスのよい食事とすること。
 ・無理をしないために「自分のペースを知る」こと。
 ・趣味など「気分転換できるもの」を持つこと。
 ・相談相手を持ち「自分と違った考えを知る」こと。
 依存症は誰でもなり得ると言われますが、これらは、生活や仕事を楽しいと思える環境作りのためにも大切な内容であると総括されました。


  左 杉村政樹先生(午前)     右:橋本省吾先生(午後)


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